PTL 2018

レーススタート

7時過ぎにスタートゲートに行くことにしていたため、そこから逆算してぎりぎりの6時に起きる。パッキングは前日に済ませてあって水を入れたり、食事をしたり最低限の準備のみ。 天気がよくても朝は寒いが走りだしたらすぐに暑くなるため防寒着は着ない。それでもスタートに行ったら寒くなったため日焼け止めをつけた後はレインウェアを着てスタート時刻の8時を待つ。 10分前くらいにレインウェアを脱いで準備完了。8時ちょうど・・・ではなくちょっと過ぎてPTLはスタートした。

街の中は前の人に続いてジョグ。登り坂は歩きで進む。15分ほど登るとコースは山の中腹を巻くほぼ平らなシングルトラックになった。ここですでに歩いているチームは抜かしておきたいと思い 少しでも道幅が広くなっているところがあれば前を抜かすようにした。コースは一度シャモニーの道路に下り線路を渡ってから登りになる。 標高1000mあたりから標高1800mくらいまで標高差800mを登る。途中でシャモニーの街の全体が見えたりして景色もいい。ただ最高地点は何も景色がなく「Tete de Prapators alt. 1844m」と札があるだけで、 なぜここに登らせたのだろうかと思った。

また一度シャモニーから延びる道路近くまで降りて軽くアップダウンを繰り返す。ここで少し脚の疲れを感じる。標高1800mのところまで登ったペースが少し速かったかもしれない。道が狭かったため後ろにぴたりと付かれると急ぎたくなってしまう。 GPSトラッキングを見るとだいたい真ん中あたりのポジションにいた。まあまあがんばっているのにこれで真ん中か・・・と思う。ただ始まったばかりで他のチームも飛ばし気味に入っていると思われるので、 そのうち全体的にペースも落ち着くだろう。

11時40分ごろから標高差1300mほどの急な登りに入る。今日はここから標高差1000m以上の登りが3本ある。 無理はしていないつもりだったがあまりの急斜面で脚が重くなってくる。山の中腹で両足の膝上内側につる感じが出て力を入れると痛みが出るようになった。 まだまだ最初の準備運動レベルなので無理せずペースを落とし休み休み登る。他のチームは止まらずに登ってくるのでどんどん抜かされていった。 折り返しの山小屋に13時50分に到着。かなり脚が痛い状態。山小屋の脇まで巨大な氷河があって見事。 若岡さんはここでがっつりタルトを食べていた。他のチームもここで買い物をしたりして混み合っている。自分はコーラを2本買って1本だけ飲む。14時20分に再スタート。

少しの間は先ほど登ってきたところを下って途中で分岐するため、後続のチームとすれ違う。まだ後ろのチームが連なって登ってきているのでポジションは悪くなくほっとする。 脚の痛みは平坦と下りなら気にならない。ときどき少しだけの登りでも痛みが出るのが気になる。 下り基調で尾根をまわり込んでいくと去年のPTLで見た景色とジュースを買った山小屋が見えてきて懐かしかった。 しかし今年は去年のコースに合流する手前でトレイルを外れ登山道のない急斜面を登るコース(オフトレイル)。

登り始めたとたんにまた脚の痛みがひどくなり後ろのチームに抜かされるようになった。ここで若岡さんが荷物を移そうと提案して簡単に渡せる荷物を若岡さんのザックに移動。 動き出しは軽くなったと感じたがすぐにその感覚は消えて休み休みの登りになってしまう。 尖った山の先端まで登り下り始めると脚の痛みは気にならなくなる。下りもオフトレイルだが先行する選手に作られたものなのか、たまには歩く人がいるのか、踏み跡はしっかりついていた。 しばらく進むと去年も通った山小屋の少し上の登山道に出た。山小屋で少し休憩しませんかと出島さんが言ったが、この下に売店のような場所がありメニューが豊富なので(去年そこで休憩した)、 下の売店まで行きましょうと先に進む。

売店到着は17時20分。この先の峠を18時台に通過したかったので予定よりも1時間ほど遅れていることになる。 売店でコーラを買ってトイレに行き軽く補給して出発。やっぱり登り始めると脚の痛みが気になるため無理せずゆっくり登る。 売店を出た直後に2チーム後ろに見えていたが、明らかにペースダウンしているのに止まらなければ追いついてこない。むしろ動き続けていれば少しずつ離れて行くように見えた。 しかしやっぱり脚は痛く、また標高が上がって来ると呼吸が苦しい。出島さんと若岡さんが私のペースだと歩きにくいかもしれないため先に行ってもらう。 木が生えているところを抜けると避難小屋のようなものがあり出島さんが「ここで休憩していきましょう」という。

疲労している自分としては休憩は正直ありがたいが、動けないわけではなく、またここで休憩すると頻度が多すぎると感じたのでゆっくりでも進みたかったが、ペースが全然上がらないのは事実なので提案に従ってみる。 しかしゆっくりでも動いていた時は後ろから抜かされなかったのに(1チームくらい抜かれたかも)止まったとたんにどんどん抜かれていくので落ち着かない。 10~15分ほどストレッチしてから出発した。時間は19時を過ぎていた。 休憩後もペースが上がらないので若岡さんが私の荷物をザックごと持って、私を空身にすると言う。情けないことだが回復しないとどうしようもないのでザックごと預ける。

コースは峠を登り切らないところからオフトレイルに分かれて大きな岩がごろごろしている急斜面をよじ登る。去年は一般ルートで峠を越えていったが、一般ルートではない山頂に登るのが今年のルート。 ときどき先行するチームが落石を発生させる気の抜けない区間。若岡さんは前後にザックを背負っていると足元が見えないためザックを私に戻す。よじ登っている間に日没になりどんどん暗くなっていった。 かなり時間がかかって山頂に着くと21時で地平線がほんのり明るい程度。この先に特徴のはっきりしないオフトレイルのナビゲーションがあり明るいうちに入りたかったが完全に暗くなってしまった。

今日はもう登りはないがすっかり脚が棒のようになってしまったため、非常に残念だが出島さんと若岡さんにChampexまで一緒に下ったら私を切り離して先に進んでくれるようにお願いする。 ここまでで順位は最後尾のほうまで落ちていると思われ、完走率を考えるとこの状態で粘るというより上げていかなければいけない。しかし私はもう上がりそうになかった。 GPSを頼りに下って行くが真っ暗な中でGPSのルートの軌跡を維持することはなかなか難しく歩きやすいところを外してつるつるの残雪の上を歩いたり、斜面の下に流されてブッシュの中を登り返したりした。 こういうのを避けるために明るいうちに入りたかったのだが・・・。

かなり下ってようやく一般ルートに出る。歩きやすい道になっても先頭を行く出島さんは走らない。もう足が動かない私を気遣ってくれているのだが、 本来は登りはそんなにがんばらずこういう繋ぎ区間はしっかり進む(ジョグとか)というのがチームの計画だったのですっかり破綻している。 Champexが近づくと道の分岐が増えてずっと歩きで集中力が緩んだためか道間違いが何度かあった。また私が眠くなってしまい2人からかなり遅れて姿が見えなくなってしまうこともたびたびあった。 Champexの道路(アスファルト)に出てからもよろよろ歩きのまま。ほんとうに長い時間がかかって午前3時にChanpex Lacのエイドに到着。 後日のチームの反省では、私がChampex Lacでリタイアするのは確定としても殴ってでも走らせるべきだったと話をした。自分でも納得できたと思うしこのだらだら歩きで2時間くらい損をしているはず。

エイドには日本人スタッフがいて(去年たけぷーがリタイアしたときにいた人だと思うが)チームの状況を聞いて食事を出して睡眠を取れるテントの案内を他のスタッフに頼んでくれたりした。 食事をしながら今後のことを話し制限時間が朝7時なのでぎりぎりまで睡眠を取って私が回復できるか様子見をして出発するという話になった。 自分では気持ち悪いとかではなく脚が痛くで動かせないので(触るととても痛い)2~3時間の睡眠でなんとかなるとは思えないと伝えた。 しかもこのまま粘ればいいのではなくペースを上げて行くというのが絶対条件になってしまっているので。 睡眠用のテントに案内してもらい毛布を借りて寝ることができた。 2時間ほど睡眠をとって6時に出島さんと若岡さんと一緒に起きる。一応身支度をしてエイドのテントに行く。やっぱり脚が痛く平地なら走れるかもしれないが登りは露骨にペースが落ちると思われた。 7時に出島さん、若岡さんを見送ってリタイアしスタッフにゼッケンからタグを切り取ってもらった。