6633レポート6:カリブークリーク(CP5:330km)~イヌビック(CP6:378km)

<3月15日>

深夜0時30分に起きて出発準備。1時に元の場所に送ってほしいとスタッフにお願いしてあったが1時までに準備が終わらず1時15分に出発。改めてイヌビックまで45km。短いのでさっさと行ってイヌビックでしっかり休む時間を作りたい。カリブークリークからしばらくは登り。ちょっとした山の上という雰囲気のところが真っ暗ながら見晴らしがよく昼間だったら素晴らしい景色だろうと思う。きれいなオーロラが出てきたので写真を撮ろうとカメラを取り出していたらその間に消えてしまった。ここからしばらくは下り。基本的に登ったら必ず同じだけ下る。途中で選手が1人ビバークしていた。カリブークリークから大して来ていないので、ここで寝るならカリブークリークでその分寝ればいいのにと思ったが、なかなか眠りたいタイミングと眠るのに適した環境が揃わないということはあるな。

朝が近づくにつれて急激に寒さを感じるようになった。体は滅多なことでは寒いとは感じないが、手足、顔がきつい。この寒さは何?と思って温度計を見るとマイナス37度で今回のレース中一番の冷え。まだ夜明けまで時間があるのでもう少し下がるかもしれない。顔は風を受けないように下向き、地面についた先を行く選手の足跡と車のタイヤ跡を追う、ときどき顔を上げて進行方向を確認。手はオーバーグローブの内側で汗が凍って氷ができている(ビニール手袋節約でベイパーバリアしていないので)。アウター(DASパーカー)のポケットに手を突っ込んで歩くとましな感じになった。足の冷えは今回のレース初のオーバーシューズ。効果を確かめる意味と、ソックス2重履きやベイパーバリアをするには一度シューズを脱がなければならず面倒。

ついでにメインで着用しているバラクラバは湿って(凍って)いるので新しいバラクラバを着ける。なんとか進み続けるがペースは上がらないしリスクも高いので、つい目はビバークできる場所を探してしまう。シュラフに退避したい気持ちが強くなる。しかし制限時間に対して余裕があるわけではないし、カリブークリークでしっかり寝てきたので、ここで停滞するわけにもいかない。明るくなれば気持ちも上向いてくると信じて前進あるのみ。

明るくなったらやっぱり体がよく動くようになってきた。明け方は強く朝を待ち望んでいたためか、朝焼けがとてもきれいに感じた。GPSを確認するとスローペースながら動き続けたのは意味があって思ったよりも前進していた。もともとこの区間の距離は短いからというのもあるけれど。ピンチを脱して足取りも軽くなって進んでいくと空港があった。空港があるのはイヌビックについた証拠。大きな三叉路は空港、イヌビック、デンプスターハイウェイの分岐で来た方向に向かって矢印でデンプスターハイウェイと書かれているのが、ようやくデンプスターハイウェイの終点まで来たんだなという実感を与えてくれる。

あとは最後のアイスロードだけだともう到着した気分になってしまう。少し休憩することにしてソリに腰掛けてのんびり食事。天気もいいし直射日光は暖かいし(気温はマイナス20度ほどだが)、看板や何かの施設(アンテナとか立っている)がイヌビックに着いたという安心感が出てくる。暖かいし、もうすぐだからとアウターを脱いで身軽になる。ところが歩き始めたら体が冷えてきた。寒い。まだか?と思いながら進むが実はイヌビックの市街地はまだまだ先っぽい。けっきょく我慢できなくなって再びアウターを着る。さらに疲労を感じてきてバテバテ。予期せず最後の最後で苦しむことになってしまった。CPが近づくとやっぱり大会スタッフの車がいて誘導された。CPはArctic Chaletsというコテージがたくさんある施設で部屋を割り当てられシャワーとベッドが使えるという場所だった。イヌビック到着14時20分。予定に対して3時間55分遅れ。