6月29日(水)ステージ4 Into the Dunes 37.3km

20110629_1.jpg3時に起きて朝食と荷造り。今日は3時間ほどバスで移動した後すぐにスタートする。お湯はスタート直前にはなく、ここで3時から4時までしかもらえないためお湯を使う朝食の場合はスタートまでかなり時間があるがここで食べて行かなければいけない。4時にバスに乗り込んで出発。山岳地帯からマイナス標高のトルファンへ。気温も一気に上がるはずだが今日のコースには砂丘があるので楽しみ。

バスは山道を下っていく。遠くの方に街の明かりが見えるがあれがトルファンだろうか。山道を下り切ると高速道路のような道に入りバスはスピードを上げていく。しばらくうとうと眠っているとバスが停止。トイレ休憩か?と思ったがどうも様子がおかしい。外に出てみると自分の乗っている3号車がタイヤ交換中。何かトラブルがあったようだ。今までの4Desertsのレースでは、エジプトではバスのエンジンが煙を吐いて動かなくなり、アタカマではバスが川にはまったのをみんなで押して脱出し、とバスで必ずトラブルが起きている。「またかー(笑)」とタイヤを交換する様子を写真に撮って楽しむ。かなり長い時間かかってタイヤ交換が終了し再び移動開始。

20110629_3.jpgスタート地点に到着したのは8時ちょっと前。ほんとうは7時到着、8時スタートの予定だったので、スタート時間は何時になるのだろうと気がかり。とりあえずいつスタートされてもいいようにスタート後でも動きながらできるようなことは後回しにして最低限の準備を済ませる。すると8時ちょっと過ぎに軽くブリーフィングがおこなわれ、その後唐突にスタートのカウントダウンが始まってスタート。きちんとスタートラインについていなかったがスタート直後に前にいたランナーを抜かして先頭集団に飛び出す。どのように走るかイメージもできていなかったが、とりあえず砂丘を楽しく走って砂丘を抜けたときの体調で後のことを考えよう。

20110629_4.jpg最初から果てしなく広がる砂丘地帯。これぞまさに砂漠!足は取られるし登りは3歩進んで2歩下がるだし、やっぱり大変なのだが、いちばん走りたい場所でもあるのでテンションは上がる。すさまじいほどの大砂丘地帯。これほどの規模はモロッコのメルズーガ砂丘以来だ。というかメルズーガ以上かもしれない。先頭集団からはこぼれて少しずつ抜かされいつもくらいのポジション10番手くらいまで後退。砂丘地帯を走っている自分の写真を撮りたくなったが、10位前後を走っている選手に「シャッター押してください」は言いづらいなあと思った。しかしやっぱり写真を撮りたいので近くを走っている選手にお願いすると快くOKしてくれた。とても楽しく時間を忘れて走ることができ砂丘の終わりが見えて来た時は「40km全部砂丘でいいのに」とか思った。そのくらい素晴らしい光景だった。実際40km続いたら大変なことになると思うが。

20110629_5.jpg10kmほどの砂丘を越えてようやくチェックポイントへ。砂がシューズに入るのを防ぐゲーターはつけていたものの1時間半ほど砂丘を走るとシューズの中には砂がたくさん入る。CP1でシューズと靴下を脱ぎ砂をしっかり落とす。このとき靴下も脱ぐのがポイント。砂はみんな靴下の中に入り足にまとわりついているのでシューズを脱いだだけだとほとんど砂は落ちない。指先の皮膚が少し剥けていたためバンドエイドを貼っておく。この間に何人かがCP1を通過。その中に小野さんもいた。水を持ってきてくれたスタッフが、ザックの背中に付けてある寄せ書きラミネート加工を見て「おー」と言っているので「友達からのメッセージなんだー」と自慢しておいた(なんて言ったら英語で自慢したことになるかわからないが雰囲気でw)。

20110629_6.jpgCP2へは割と平坦な荒地をゆっくり走る。まだ太陽は雲で隠れているし暑くはない。CP2の手前、速歩きで小野さんに追いついた。2人一緒にCP2に到着。気温も上がって少し気持ち悪くなってきたため気分転換に音楽を聴きながら歩くことにする。ウォークマンや食べ物を取り出しているうちに小野さんは行ってしまった。経験の少ない人はチェックポイントで時間を無駄にする印象があるのだが、小野さんは初砂漠というよりはレース経験自体も決して多くはないのにチェックポイントが早い。

速歩きしながら水と塩タブレットを繰り返し摂る。手が浮腫んでいるので手を握ったり開いたりして血行を良くする。しばらく進むと塩タブレットがない!ザックのポケットから出し入れしていたのだが落としてしまったらしい。こまめに摂っていたので、落とした場所からそんなに離れてはいないはずと思い後ろを振り返る。だいたい自分が歩いてきた場所はわかる気がする。しかし真っ平らな地面というわけでもなく塩タブレットの袋を見つけられるかどうかと考えるとちょっと自信がない。客観的に判断すれば不可能に近いのかもしれない。少しどうするか考えたが「とりあえず今日だけでもなんとかゴールにつければ後は明日のロングコースのみ。みんなから少しずつ塩を分けてもらえば1日分くらいはすぐ集まるだろう」と考え先へ進むことに。最悪コーンスープの粉でも舐めて進めばなんとかなるだろう。

20110629_8.jpg急激に気温が上がり「これはちょっとやばい」という状況になってきた。しかし遥か前方に小野さんらしき人影が見える。これは追いつくしかない!足を速めて進むと小野さんは一度道路に出てその先のコースを探している様子。地元警官か何か数人の人影が見えて小野さんを取り囲んで何かしている。一瞬「何かトラブルでもあったのか?」と思ったが集まっていた人影がばらけて向こうに向かって走り出す小野さん。「あー、走らないでー!」と思うがこちらはまだ荒地にいてペースを上げることができない。もう追いつけないかも・・・。一度舗装路に出て警察官のいるところを通りすぎる。

小野さんが走って行った道は車が普通に走れるくらいの土の道。もし追いつけなければ本当にコーンスープでもカップラーメンでも塩分のあるものを口に含みながら進むしかなくなってしまう。幸い現時点では塩分も水も足りているらしく手の浮腫みもすっかり回復している。「仕方ない一か八か全力で追いかけるか!」と判断。追いついて塩タブレットでもスポーツドリンクの粉でも分けてもらえればそこから先は時間をかけてゆっくり進んでもいい。土の道を全力で走る。しばらく進むと再び荒地になったが前方に歩いている小野さんを確認。「そのまま歩いていてくれ!」と願いながらやっと追いつくことができた。

「スポーツドリンクの粉をもらえる?」と聞いて、塩タブレットを落としてしまったことを伝えると小野さんは塩タブレットの予備が丸ごと2袋余っていると言い1袋分けてくれた。助かった・・・。ちょっと命懸ってたな。気温は朝とは打って変わってあり得ない暑さになりつつあった。追いつけなくて塩なしだったら本当にやばかった。昨日までともまるで違う暑さ。小野さんと2人で歩く。ゴールしたら塩タブレットのお礼にビールをおごる約束をする。砂漠での塩の価値に比べたらビールなんて安い。ピンチを切り抜けた安堵感もあって楽しくCP3へ到着。

20110629_9.jpgCP3ではスタッフから「この先コースフラッグがなくなっている場所があるので335度の方角へ進め」と指示があった。またかなり暑くなっているので水を余分に持っていくようにとの指示もあり。ここまでですでに十分暑いのにさらに上を行く暑さになりつつあった。暑いんじゃなくて熱い。小野さんと一緒にコースを探しながら行くことにする。CP3を出てしばらくすると早速フラッグが見当たらない。コンパスを見てだいたい335度方向を探すが、まったくフラッグがなく進むことができない。前に3人のグループがいて335度とは違う方角に進んでいる。その方向を良く見ると3人グループは迷いなく進んでいるように見えたため「コースを見つけているのかも」と思い。振り返って小野さんに「あの集団追いかけますか?」と聞くと小野さんはその方向にフラッグを見つけることができ「ありました!」と指している。スタッフの言っていた335度とまったく方角違いますけど・・・

ピンクフラッグを追いかけ順調にゴールできそうと思われたが、あまりの高温に体が動かなくなってきた。水はお湯になり、カーボショッツは熱くなっている。小野さんの後ろについて行くので精一杯。「これは今日は相当リタイア者が出るな」と小野さんと話をする。ゴールゲートが見えてきて2人で「やった!」と喜びの声を上げるが、予想した行動時間よりも短い。「4Desertのレースはゴールが見えてからが長いから」と言いつつも地形はほぼ平地なので迂回するような場所もなくすぐにゴールできる期待が高まる。しかしピンクフラッグを追いかけて行くと牧草地の柵のような鉄条網に突き当たった。そのまま鉄条網を潜れば20~30m先に道が見えフラッグがゴールに向かって続いている。しかしピンクフラッグは鉄条網を潜るのではなく右に曲がって果てしなく続く鉄条網に沿って”ゴールとは反対方向”に続いている。どこまで続いているのか先が見えない鉄条網を迂回してまたこちらに戻って来るらしい。

「やっぱり・・・」と絶望的な気持ちになりながらも2人で進み続ける。そういえば前にいた3人組がいなくなっている。ショートカットしやがった。さらに後ろにいた2人組の姿も消えている。あいつらもか!。しばらく必死に進むと柵の終わりが見え作業道が柵の中(どちらが中かはわからないが)に入っていく。あとはまっすぐゴールゲートに進むだけ。小野さんに「ゴールしたらショートカットした奴らのことチクッてくださいね」と話す。時間にしたら10~15分程度か?しかし前の3人組は近づいていたし、あのまま全員で迂回コースに入っていたら抜かせたかもしれない。(自分はふらふらだけど)後から聞いた話だが日本人は全員ピンクフラッグに沿って迂回したが海外の選手はショートカットしたようだった。(そしてショートカットした人にペナルティが与えられることもなかった)やっとの想いでゴール。そしてゴールテントに倒れこむ。ふらふらだった割には小野さんに引っ張ってもらったおかげて17位とまずまずのところをキープ。今日は距離にすれば40km弱というごく普通のコースだったが波乱万丈でとても長く感じた。

20110629_10.jpgゴールテントに倒れこんだまま行動不能に。がんばれば自分のテントには帰れるかもしれないが使える水も限られる場所で倒れているよりも、スタッフやドクターが近くにいる場所で倒れているほうが安全。時々スタッフが頭を持ちあげて水を飲ませてくれる。完全に赤ちゃん状態だ(笑)あまりに自分がぐったり倒れているので、スタッフが顔の上で「名前は?」と大きな声で聞いてくる。名前を言いながらその意味を理解して笑ってしまう。ちゃんと意識ありますよー(笑)気温はさらに上昇。風が吹くと熱風で焦がされているよう。風が吹かないほうが楽というあり得ないことになっている。

しばらくしてからスタッフに両脇を抱えられメディカルテントへ移動。ベッドのようになっているアウトドアチェアに横になる。近くにスプレー(霧吹き)があったので体に霧を吹きかける。これは快適。テントで倒れているよりよっぽどいいや。しかし後からゴールしてくる人が来たら場所を譲らなければいけないと少しは気にしていたが、ほとんど選手は帰ってこない。どういうわけかゴールテントやメディカルではスタッフがいつもに比べると少なくどこかに出かけている様子。メディカルはほぼセルフサービスで選手自身が好きに使っている状態になっていた。

20110629_11.jpg横になっていてときどき動くとベッドの金属フレームに手足が触れてやけどしそうなほど熱い。空には雲もあり日差しが時々遮られる晴れというよりは曇りに近い天気なのにこの暑さはなんなんだろう。いつのまにかジミーがメディカルテントにぶらっとやってきてスプレーをかけてくれていた。小野さんが「大丈夫ですか」とやってきて「何かできることがあればします」と言ってくれたので、あまりに申し訳ないことだが自分の荷物からコーンスープを出してもらいお湯を注いできてもらった。コーンスープを飲んでやっと一息。ようやく「動かなきゃ」という気分になる。ゴールしてから2時間経過していた。一度テントに行ったが自分の荷物をゴールテントやメディカルテントに置き忘れたりしていたので荷物の回収に出かける。ゴールのスタッフは足りていないようで選手がゴールしてきても見ていなかったり、ゴールの太鼓を叩く人がいなかったりしたので、自分が少しの間太鼓をたたいた。ちょっと叩いてみたかったので叩けて嬉しい。

自分のテントに帰り横になって「今日はもしかしたら日本人参加者からもリタイアが出るかもしれない」と思っていると長谷川さんが帰って来た。「ありえ~ん・・・」と倒れこみぐったりしている。あまりの暑さで各CPでは待機・休憩者続出、コース上で行き倒れている人も続出だったらしい。キャンプ地にもだいぶ選手は帰ってきていたがゴールテントが拡張されて野戦病院のように人が倒れている。そんな中、隣のテントから「ちょー簡単だったー♪」と成宮さんの声が聞こえてきた。無事に帰って来たらしいが・・・簡単だった?そんなわけないだろうが、冗談でも元気にそんなことを言えてしまうのが恐ろしい。さすがリタイアするする詐欺だ(毎日のように今日はリタイアすると言っている)。

日本人参加者は無事に全員ゴールしたが、みんなの意見は同じ「このまま明日のロングステージやったら死人が出る」。今日1日でみんなぐったり。明日この暑さの中で80kmなんてあり得ないという気持ちだった。長谷川さんと話していたら「昨日の夜、寝ている時、トラックでスピード練習しているみたいな呼吸してたよー」と言われた。「毎日楽しませてもらっています」とのことだけど・・・それって長谷川さんの睡眠を妨害してないか?夜も気温はあまり下がらず・・・ちょこちょこ目を覚ましては水を体にかけて耐えた。

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